高すぎる現状回復費用!平均や相場は?退去費用を安く抑えるために国交省ガイドラインを!

高すぎる現状回復費用!平均や相場は?退去費用を安く抑えるために国交省ガイドラインを!

借りている賃貸物件の退去が目前に迫っている方にとって「退去費用っていくらになるの?」と思って不安になると思います。ほとんどの方にとって退去の経験が少ないわけであり、無理もない話です。

私は不動産管理会社で3年間働き、管理職として退去の案件を2000件以上確認してきた経験から、どのようなところで管理会社が借主にわからないように多めに費用を請求するかが手に取るようにわかります。(なお、私はぼったくり行為をしたことはありません)。

この記事の内容を参照すれば、退去の初心者にもかかわらず不当な請求があった場合、交渉内容方法を理解することができ、請求費用を下げる方法を理解することができます。ご自身で値下げ交渉が難しければ、おすすめの退去コンサルタントなどの情報も掲載しています。

私が不動産管理会社社員としての実績3年大家としての実績5年を凝縮し、本記事を作成しました。最後までどうぞご確認お願いします。

この記事を読んだらわかること

・初めて退去をする人が賃貸の部屋を退去した時、不当な退去費用を値下げする方法が分かる。
不動産管理会社も基準にしている国交省原状回復ガイドライン重要ポイントのみを説明している。
・入居時、入居中、引っ越し後など時間軸に分けて、退去費用を下げる対策を紹介している。自分でできなければ、不動産コンサルタントなど外部委託先も紹介。
国交省原状回復ガイドラインの引用箇所を明記しているので、賃貸管理会社へ交渉をする際に引用箇所がすぐわかる。

退去費用の相場

退去費用は、物件の広さや状態、居住年数によって異なります。以下は一般的な相場です。

この範囲に定まっていたら、概ね問題ありません。ただ、たとえば、6年入居して相当きれいに使っているのに相場金額になっているとしたら、不動産管理会社が相場費用まで金額を引き上げているかもしれません。請求書の精査が必要です。

平米数間取り退去金額
20㎡~30㎡ワンルーム・1K2万~4万5,000円
30㎡~50㎡1DK・1LDK・2DK3万~6万円
50㎡~70㎡2DK・2LDK5万~8万5,000円
70㎡~90㎡2LDK・3DK・3LDK7万~11万円
90㎡以上3LDK・4DK・4LDK9万円~12万円

退去費用が上がる理由

退去費用が上がる理由

退去費用が増えてしまう理由は大きく、二通りあります。後述しますが、入居者が退去するときに負担するのは入居者原因によるものだけです。

入居者原因

入居者が部屋を汚し、退去費用が増加してしまう。

不動産会社、貸主原因

主に不動産管理会社が不当に請求金額を増やしてしまう。

入居者原因

入居者原因により、退去費用が上がる損耗・破損は以下3つです。

  • 故意または過失による損傷
  • 善管注意義務違反
  • 通常の使用を超えるような使用による損耗

故意または過失による損傷

借主が原因で発生した傷や汚れは、借主が修繕費用を負担します。例として、飲み物をこぼしたシミ家具移動によるクロスの破れなどがあります。

善管注意義務違反

善管注意義務違反とは、賃借物を通常の注意を払って使用せず、不適切な管理や使用方法により、通常の使用を超えた損耗や損傷を生じさせることです。

例えば、日常的な清掃の怠慢によるカビの発生飲み物をこぼしたままにする、結露を放置してシミを作るなどが該当します。

通常の使用を超えるような使用による損耗

文字通りになりますが、経年劣化を超えて、故意ではないものの、激しい損耗のことです。

不動産会社・貸主原因

請求金額が高くなる理由のうち、代表的なケースをご紹介します。

  • 無知の大家さんが直接退去費用を算定しているケース【5%以下】
  • 不動産管理会社が原状回復ガイドライン(※)を知らないケース【全体の30~40%】
  • 不動産管理会社が意図して水増し算定しているケース【10%くらい】
  • 【番外編】まともな不動産会社【30~40%くらい】

※原状回復ガイドライン・・・「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」のことであり、以下、「原状回復ガイドライン」とします。参照リンク:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

無知の大家さんが直接退去費用を算定しているケース【5%以下】

田舎の物件にありがちですが、直接大家さんが管理しているケースです。田舎の方が国土交通省から出ている現状回復の基準書:原状回復ガイドラインなど知らないため、請求内容がリフォーム会社の見積と同じになりがちです。

不動産管理会社が原状回復ガイドラインを知らないケース【全体の40~50%】

不動産管理会社の社員がスキルが低く原状回復ガイドラインを知らないケースもあります。

不動産管理会社の労働環境は非常に過酷で、社員の年収が300万円~400万円くらいで、借主・貸主から毎日クレームを浴びるような仕事です。離職率も高く、私が勤めていた会社でも、2年で社員が全員変わるレベルでした。不動産管理会社の規模が大手、中小でも多少の差はあるものの似たような環境です。

人手不足により、賃貸管理のベーススキルが全く無い状態で現場に出され、なおかつ会社の売上ノルマに追われています。原状回復ガイドラインに基づいた請求金額を算定できずに請求書を作成し、結果として「請求書水増し」になることは頻繁に起こります。

不動産管理会社が意図して水増し算定しているケース【10%くらい】

悪徳不動産管理会社が、原状回復ガイドラインを知っていながら、「借主はどうせ知らないだろう」ということで意図的に水増しして請求してくるケースです。物件の禁止事項(たばこ不可、ペット不可)を破るとやりがちな請求です。

【番外編】まともな不動産会社【40~50%くらい】

退去費用が高額になりませんが、まともな不動産管理会社がいることを忘れてはいけないため、本項目を記載しています。原状回復ガイドラインに基づく請求ができるだけで不動産管理会社としては優秀です。

原状回復ガイドラインで退去費用を下げられる理由

不動産管理会社の考えとして、入居者が退去するときの苦情は「タイムパフォーマンスが得られない面倒ごと」です。この弱点を逆手に取るのが、本記事でお勧めする原状回復ガイドラインに基づいた合理的な反論です。

原状回復ガイドラインは不動産管理業界の基準書

原状回復ガイドラインは不動産業界の基準書です。原状回復ガイドラインの影響力は強く、判決で引用されるほどです。原状回復ガイドラインに反した内容なら裁判に突入しても9割負けるといっても過言ではありません。

不動産管理会社社員の社内事情

社員A
社員A

「何が貸主負担・借主負担なのかなんて、入居者にはどうせわからないから費用を増やして請求してしまえ

社員B
社員B

「退去案件は他にも多数あるので、裁判など面倒」

社員C
社員C

貸主(オーナー)負担がふえたら、貸主への説得が必要。説得するにしても、原状回復ガイドラインに沿って説明しないと納得しないしなぁ。面倒なんだよね。

貸主(=物件オーナー)へ合理性もなく負担が増えると、社内での承認がおりません。社内の部長や課長などの幹部社員は貸主へ理由もなく、負担を増やすことはしません。不動産管理会社にとって一番のお客様は貸主だからです。

不動産管理会社の社員は本当に多くの案件を抱えています。一日4~5部屋の立ち合いをする人もザラにいます。加えて、社内承認、業者発注、貸主説明などの付帯的な事務処理を考えると本当に時間がありません。時間もないにもかかわらず、理由もなく入居者がクレームを言うと仕返しに高額な見積が出てくることもあります(怖い業界なんですよ)。

オーナーに追加負担を納得してもらうために、賃貸管理会社の社員は原状回復ガイドラインを使って説明が必要です。でも不動産管理会社の社員としては、原状回復ガイドラインを勉強することも面倒なのです。

不動産管理会社の役に立てば、退去費用交渉はうまくいく!

不動産管理会社の社員にとって貸主を説得することが一番の厄介ごとであれば、代わりに借主が貸主を説得する書面を書けばいいということになります。

つまり、借主側で原状回復ガイドラインを使って、借主・貸主負担を明確に分けた形でメール連絡が来ると、不動産管理会社社員としては大変楽であり、以下の3つのメリットがあります。

  • 不動産管理会社社員としては、原状回復ガイドラインに基づき貸主・借主負担が書かれた内容なら、貸主にも合理的な説明がつく。
  • 不動産管理会社社員としては、メールはコピペ、転送ができる。
  • 不動産管理会社社員としては、原状回復ガイドラインを読んで内容を確かめる時間も削減できる。

現状回復ガイドラインに沿って、借主負担と貸主負担の整理し、交渉することで、退去費用を値下げしましょう。

退去費用の内訳と借主負担は?

退去費用の内訳を要素別に解説します。

退去費用=①原状回復費+②契約書(特約に記載されている費用)−③敷金

①原状回復費

原状回復費を計上するためには、原状回復費自体の定義、残存価値の計算方法・耐用年数、借主貸主の負担箇所を考慮する必要があります。

原状回復費とはなにか?

原状回復費とは以下の4つの要素で定義されます。一文で書くと非常に長いため、箇条書きで記載します。

原状回復費の定義

  1. 原状回復する対象:借主が原因で損耗した住宅設備・内装品
  2. 残存価値の計算基準時点:退去する時を起点に住宅設備・内装品の残存価値を計測
  3. 支払い対象:住宅設備・内装品の残存価値分の金額復旧工賃
  4. 原状回復に含まれない内容:原状回復には、元のきれいな状態に戻すという意味はない

参考までに、国交省の「原状回復ガイドライン」による現状回復の定義を掲載します。

原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、 原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の(~中略~)損耗・毀損を復旧すること」 と定義しています。

国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版) 」> 本ガイドラインのポイント ①
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

原状回復費の具体的計算方法

具体的な計算方法は後述しています。ご参照ください。

②契約書-特約に記載されている費用

契約書の特約とは、賃貸借契約書の基本的な契約条件以外で、貸主と借主が個別に合意した条件のことです。特約は法律で定められるものではなく、原則として当事者間で自由に設定することが可能です。

ただ、特約も借主が気づかなければ何でもかんでも入れてもいいわけではなく、特約の要件費用相場を満たす必要があります。

  • 特約の要件
  • 室内クリーニング費用相場
  • エアコンクリーニング費用相場
  • 鍵交換代金相場

特約の要件

特約の要件とは、以下(1)〜(3)です。賃貸契約書の中で、特約の内容として書かれている場合、原則、支払う必要があります。(国交省現状回復ガイドライン Q&A-Q16 P45 ※リンク:国交省サイト

要件要件を満たす具体的な記載内容
(1)賃借人が負担すべき内容・範囲が示されている。・例:契約書に「40,000円で、ルームクリーニングをする」との記載。
・契約書に「契約終了時に、本件貸室の汚損の有無及び程度を問わす専門業者による清掃を実施し、その費用(中略)を負担する旨の特約」として記載されている。
(2)本来賃借人負担とならない通常損耗分についても負担させるという趣旨及び負担することになる通常損耗の具体的範囲が、明記されているもしくは口頭で説明されていること・賃貸契約書の特約欄に通常損耗文を負担することになれば、その範囲について記載が必要。
(3)相場費用を考えて妥当ならば有効。相場費用内であること。(後述)

※以下の文章では相場を記載しますが、物価変動により変わりますので、その点ご了承ください(2024年11月時点)。

室内クリーニング費用相場

ルームクリーニング費用の相場は大体以下です。一平米あたり1000円~1200円くらいです。相場から外れている場合、別の業者を依頼してください。

間取り金額
1R・1K16,000円〜45,000円
1LDK・2DK29,000円〜75,000円
2LDK・3DK40,000円〜80,000円
3LDK・4DK61,000円〜100,000円

エアコンクリーニング費用相場

家庭用壁掛け型エアコン一台当たり以下の金額です。相場から外れている場合、別の業者を依頼してください。

施工金額
自動お掃除機能なし7,000円〜12,000円
自動お掃除機能あり14,000円〜30,000円

上記相場を超えてきたら、管理会社に、別のクリーニング業者を依頼してください。

鍵交換代金の相場

鍵交換代金の相場一覧です。相場から外れている場合、別の業者を依頼してください。

鍵の種類金額
シリンダーキー(ディスクシリンダー、ピンシリンダーなど)10,000円〜17,000円
ディンプルキー15,000円〜25,000円
電子錠5,000円〜35,000円
カードキー10,000円〜12,000円

鍵交換代金については、有名なYoutube 動画では「値引きができる」ということも言っていますが、原状回復ガイドラインによれば、値引きはできません。鍵交換費用を特約に入れ、交換費用が相場以内であれば借主負担となると記載されています。(原状回復ガイドライン[事例36] 清掃費用負担特約並びに鍵交換費用負担特約について消費者契約法に違反しないとされた事例 ※リンク:国交省サイト

③敷金

敷金

敷金とは

敷金とは、賃貸契約において借主が貸主(事実上、不動産管理会社)に預けるお金で、主に家賃の滞納や退去時の修繕費用の担保として使われます。通常、契約終了後に退去費用を差し引いた残額返還されます

「敷金は全額償却」、「敷引」とは

敷金は全額償却」「敷引」は同じ意味で、退去費用を敷金で差し引いて余りがあっても原則として返金はされません。

事務処理を簡略化し、オーナーの取り分を増やすための条文です。

ですが原状回復ガイドラインでは、敷金の償却自体が無効という判例を引用しています。万が一まとまって敷金が余った場合、管理会社に交渉してもいいかもしれません。

本件敷引特約(=敷金全額償却の特約)は賃貸人の有利な地位に基づき、一方的に賃借人に不利な特約として締結されたものであり、民法1条2項に規定する基本原則に反しており、消費者の利益を一方的に害する(中略)。よって、本件敷引特約は消費者契約法10条の要件を充たしており、無効である

原状回復ガイドライン「事例23」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

礼金とは

礼金は敷金とは別です。礼金とは、賃貸物件の契約時に借主が大家さん(貸主)に支払う一時金のことです。敷金や保証金とは異なり、退去時に返金されません。退去時には考慮しません。

原状回復費の対象と具体的な計算法

原状回復費の計算をする上では、耐用年数・残存価値の計算法、借主が負担する損耗の具体例があると計算しやすいです。

  • 耐用年数
  • 残存価値の具体的計算法
  • 借主が負担する破損ー具体的な項目
  • 貸主が負担する破損ー具体的な項目

耐用年数

経年劣化とは、時間の経過に伴い、建物や設備の品質や性能が低下することです。ほとんどの内装品は5年~8年で残存価値が1円になります。

計算上、初期の設置金額÷耐用年数で年間の金額を算出します。住宅設備・内装品ごとの耐用年数は以下の表をご参照ください。

住宅設備・内装品名残存価値が1円になる年数(耐用年数)負担単位
クロス6年・原則㎡単位が望ましい。ただ、1面分まではやむをえないとする。
・たばこの匂いヤニ汚れの際には全面張替えが妥当(※)
考慮無し一枚単位
カーペット・クッションフロア6年棄損が複数個所の場合は、居室全体
フローリング一部の補修は経過年数を考慮しない。フローリング全体の損耗があり張替えの場合、建物の構造により変わる。木造22年、軽量鉄骨27年、重量鉄骨34年、RC47年。原則㎡単位
ふすま考慮無し一枚単位
エアコン、ストーブ、電気冷蔵庫、ガスレンジ5年補修部分、交換相当費用
主として金属製以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンス)8年補修部分、交換相当費用
便座、洗面台など給排水・衛生設備・金属製の器具備品15年補修部分、交換相当費用
※原状回復ガイドラインに記載なし原状回復ガイドラインに明確な記載がないため、不動産管理会社により対応が分かれる。減価償却なしの実費請求のケースが多い。
参照:原状回復ガイドライン別表1、別表第 5(第 14 条関係) 主なものを抜粋(リンク:国交省サイト

たばこの匂いヤニ汚れ・・・「喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる。(原状回復ガイドライン P23)」

残存価値の具体的計算法

原状回復費の具体例な計算方法を提示します。

「住宅設備・内装品の残存価値分の金額」とは?

住宅設備・内装品が経年劣化し、残った価値のみを支払います。

以下の例で、退去時点のリフォームに2,500円かかるとしても、借主が原状回復として負担する金額は残存価値と工賃1,500円です。

住宅設備・内装品の残存価値分の具体的なケース

以下のケースの場合、いくらの原状回復費が借主負担か想像してみてください。答えはすぐ下の「計算結果と借主負担金額」です。

  1. 貸主Xが内装のクロスを1平米1,000円、合計2平米2,000円を新規設置した。
  2. クロスは6年で価値が1円になるものである。毎年167円(=1000円/6年)価値が下がる。
  3. 設置して1年後に、借主Aさんが入居した。
  4. 借主Aさんは入居中に間違ってクロスの一部(1平米の範囲内)に傷をつけてしまった。もう1平米はきれいな状態。
  5. 借主Aさんは2年ちょうどで退去した。設置から3年経過している。
  6. 管理会社が見積を取ると、物価高もあり新品の内装クロスは一平米1500円、工賃は1,000円と判明。管理会社は2平米のクロス替えの4000円を請求をしている。
  7. 一平米あたりの残存価値は約500円(=1000円ー(年間167円減×3年))

計算結果と借主負担金額

  • 原状回復する対象:傷をつけた1平米部分
  • 残存価値の計算基準時点:退去時点であり、クロスは設置から3年経過
  • 支払い対象合計1500円破損した部分のクロスであり、3年の経年劣化のため半額の価値500円の価値と工賃1,000円
  • 原状回復に含まれない内容:きれいで借主原因で破損していない箇所(2平米のうち1平米)。現在の金額でのクロス料金。

工賃は払うのか?

工賃は借主負担です。これは原状回復ガイドラインに記載があります。

インターネット記事の中には、工賃を負担する必要がないと言っている記事や説明動画が散見されます。原状回復ガイドラインでは借主負担と言っていますので、間違いなく借主負担です。ご注意ください。

経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得ることを賃借人は留意する必要がある。

「原状回復ガイドライン」第1章 原状回復にかかるガイドライン>Ⅱ 契約の終了に伴う原状回復義務の考え方>3 賃借人の負担について>(2)経過年数の考え方の導入
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

借主が負担する破損ー具体的な項目

請求書を見ながら、以下に掲載する借主負担となる工事対象が挙げられていることを確認してください。また、借主さんで、実際に以下のような破損をしてしまったことを写真で確認してください。

「原状回復ガイドライン 別表5第14条関係」(リンク:国交省サイト)を参照しています。

借主負担の具体的な例

  • 床(畳・フローリング・カーペット)
    • カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足等の場合)
    • 冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)
    • 引越作業等で生じた引っかきキズ
    • フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
  • 壁、天井(クロス)
    • 賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合)
    • 賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)
    • クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
    • タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)
    • 壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
    • 賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡
    • 落書き等の故意による毀損
  • 建具等、襖、柱等
    • 飼育ペットによる柱等のキズ・臭い(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)
    • 落書き等の故意による毀損
  • 設備・その他
    • ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
    • 風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
    • 日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
    • 鍵の紛失または破損による取替え
    • 戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草

貸主(=大家さん)が負担する破損ー具体的な項目

請求書を見ながら、以下に掲載する貸主負担の工事対象が費用明細に入っていないことを確認するために、貸主が負担する費用を掲載します。

貸主負担の具体的な例

以下、ガイドラインに記載のある貸主負担の項目例です。

「原状回復ガイドライン 別表5第14条関係」(リンク:国交省サイト)を参照しています。

  • 床(畳・フローリング・カーペット)
    • 畳の裏返し、表替え(特に破損してないが、次の入居者確保のために行うもの)
    • フローリングのワックスがけ
    • 家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
    • 畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
  • 壁、天井(クロス)
    • テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
    • 壁に貼ったポスターや絵画の跡
    • 壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
    • エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡5.クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
  • 建具等、襖、柱等
    • 網戸の張替え(破損はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
    • 地震で破損したガラス
    • 網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)
  • 設備・その他
    • 専門業者による全体のハウスクリーニング(賃借人が通常の清掃を実施している場合)
    • エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)
    • 消毒(台所・トイレ)
    • 浴槽、風呂釜等の取替え(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
    • 鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
    • 設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)

入居時点、入居中の対策

入居する時の賃貸契約から対策は始まります。入居中も部屋はきれいに、最初の契約通りにトラブルなく使うことが原則です。

  • 入居時点での賃貸契約修正依頼
  • 入居時の対応ー写真撮影・破損状況報告書
  • 掃除を定期的に行う・家事代行サービスを利用する
  • 喫煙者は空気清浄機を一年中かけっぱなしにする
  • 破損事故があっても入居時の借家人賠償責任補償保険で修理
  • 借りている部屋に6年以上住む
  • 部屋の禁止事項を守る

入居時点での賃貸契約修正依頼

特約に次の入居者のための施策(エアコンクリーニング、鍵の交換など)があれば外してもらうように不動産仲介に依頼しましょう。

不要な退去費用減らしは入居時から始まります。

入居時の対応ー写真撮影・破損状況報告書

悪徳不動産業者の中には、退去時の立会で「入居時の状態がリフォーム直後で完璧に綺麗だった」と嘘を言って減価償却させず高額請求するところもあります。

部屋の状況を写真に撮って保存してください。退去時に最初の状態がどのようなものかが武器になります。

また、破損状況報告書(管理会社から必ず渡される)を詳細に書いて、退去時の費用とならないようにしましょう。

掃除を定期的に行う・家事代行サービスを利用する

部屋をキレイに保つことは、退去時の費用を抑えるための重要なポイントです。定期的な掃除は気分も上がり退去時の費用も抑えられる一石二鳥の方法です。定期的な掃除で、快適な部屋づくりを心がけましょう!

とはいえ、忙しい毎日に追われ、家事に手が回らないと感じていませんか?そんな悩みを解決する強い味方が、家事代行サービスです。

家事代行サービスがもたらす5つのメリット

  • 時間の有効活用: 仕事や育児に集中できる時間が増えます。
  • 体力的な負担軽減: 年齢とともに感じる家事の負担が軽くなります。
  • ストレス解消: 溜まった家事によるストレスから解放されます。
  • プライベート時間の確保: 趣味やリフレッシュの時間が増えます。
  • 家族関係の改善: 家事に追われず、家族との時間を大切にできます。

最近の家事代行サービスは進化しており、1時間あたり3000円前後からと手頃な料金で、掃除、洗濯など様々な家事をお任せできます。夜間や早朝の対応も可能なサービスもあるので、自分のライフスタイルに合わせて利用できます。

家事の負担から解放され、より充実した毎日を過ごしてみませんか?家事代行サービスで、あなたの生活が変わります。

家事代行のPR

喫煙者は空気清浄機を一年中かけっぱなしにする

喫煙者の方がたばこを吸うと、煙の色がクロスについてしまい、クロス全面張替えになりかねません。1LDKの部屋なら壁天井クロスだけで10万円くらいします。。。

たばこの煙を濾過してくれる空気清浄機を購入し、年中つけておくことをお勧めします。おすすめは加湿空気清浄機 シャープ KI-RX70-Wです。一番強力です。

破損事故があっても入居時の借家人賠償責任補償保険で修理

入居時に、借家人賠償責任補償保険という保険に加入します。この保険で補償できる可能性があります。ですが、破損したらすぐにリフォーム見積取得や保険会社と相談が必要です。目安として事故発生後、30日以内を考えてください。

  • 借家人賠償責任補償保険の補償範囲
  • 破損したらリフォーム会社へすぐに見積取得
  • 保険会社への相談
  • リフォームの実施と保険会社への申請

借家人賠償責任補償保険の補償範囲

インターネット上に借家人賠償責任補償保険ではカバーされないとは書かれている記事もあります。ですが、補償内容をよく読むと、保障するケースがあいまいになっており、保険でカバーされる可能性があります。

「不測かつ突発的な事故」というカテゴリなら火災保険は受理してくれる傾向にあります。コンサルしたお客様の中には、「新しい家具を移動させようとしたが事故で、内装が破損・汚れた」というケースで保険が下りたことがありました。

ただし、事故が発生してからすぐ保険会社に連絡してください。即時性がないと保険会社は対応してくれません。目安として事故発生後、30日以内としてください。

破損したらリフォーム会社へすぐに見積取得

保険会社に申請するために、複数のリフォーム会社へ無料見積もりをお願いしてください。詳細な見積もりを依頼しましょう。複数の会社から見積もりを取ることで、適正価格と質の高い施工を依頼することができます。

リフォーム会社紹介サイトPR

保険会社への相談

見積もりが出たら、すぐに保険会社へ連絡することが大切です。多くの保険会社は、事故発生後できるだけ早い段階での報告を求めています。保険会社に連絡する際は損害の状況や見積もりの内容を詳しく説明しましょう。

金額にもよりますが、保険会社は独自の調査を行い、保険金の支払い可否を判断します。この過程でリフォーム会社の見積もりが重要な資料となります。あくまで経験則ですが、保険会社が独自調査をするのは40万円くらいが目安です。

早めの行動と正確な情報提供が、スムーズな保険金請求につながります。

リフォームの実施と保険会社への申請

保険会社からOKが出れば、リフォームを実施してください。リフォームが完了すれば、保険会社へ請求書・領収書を提出し、入金を待ってください。

借りている部屋に6年以上住む

不動産管理会社や立ち合い業者によくある費用水増しの手法は「クロス全面張替え」です。ですが、水増しがあっても回避する方法として、クロスの価値が1円になるように「6年住む」がおすすめです。

喫煙者の退去ではクロス全面交換が原則

喫煙者の方が退去するときは、ほぼ100%ですが、不動産管理会社はクロスの全面交換を実施します。

というのも原状回復ガイドラインに「喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、当該居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる。」という記載があるためです。

ただこれは、「喫煙し、6年住んだとしても、通常損耗は無視、クロス全面交換は全額借主負担」とは言っていません。クロスにおいては必ず通常損耗があります

この件は原状回復ガイドラインによによれば、間違いとわかります。特約で決まっていない限りは、通常損耗で減価分を考慮して算定した事例で、ヤニ汚れについて、通常損耗を差し引いて借主負担となっています。

[事例 31]本件クロスの変色は喫煙によるタバコのヤニが付着したことが主たる原因であり、(中略)賃借人Xは補修金額としてクロスの張替え費用から本件クロスの通常損耗による減価分(減価割合 90%)を控除した残額を負担する」(神戸地方裁判所尼崎支部判決 平成21年1月21日)

国交省原状回復ガイドライン[事例 31]
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

6年住むことで高額請求を回避!

悪徳不動産管理会社が水増しする箇所は、クロス費用の水増しです。たとえば、「匂いがするから全面張替え」「クロスが高級品で一平米2000円」を名目にします。この水増しを防止する方策が、「6年住む」です

6年住めばクロスの残存価値が1円なので大した金額になりません。よくあるのが喫煙者の方にはお勧めの退去の仕方です。

部屋の禁止事項を守る

入居者の中には軽い気持ちで「禁煙」「ペット飼育不可」を破る人がいます。このケースでは悪徳であろうが普通であろうが、不動産管理会社は貸主負担を最小にするために何としてでも原状回復費を上げにかかります。禁止事項は守りましょう。

退去を決めてから退去申請前までの対策

退去立ち合い時に値下げ交渉を行うためには、事前準備を行い管理会社に部屋がきれいな状態であると印象を抱かせ、ご自身の立場を苦しめないようにすることがポイントです。

  • 退去を決めた時、契約書・入居時の破損状況報告書を用意する
  • 破損個所を市販のリペアセットで補修する
  • 部分的にリフォーム会社に依頼する

退去を決めた時、契約書・入居時の破損状況報告書を用意する

賃貸契約書、入居時の破損状況報告書を用意します。

契約書の特約事項に、ルームクリーニング費用などの付帯費用が金額と一緒に書かれています。前述の要件1~3が満たされていなければ、払う必要がありません。例えば、ルームクリーニング費用に金額が書かれていなければ、払う必要はありません

破損個所を市販のリペアセットで補修する

ご自身でつけてしまった簡単な破損であれば、市販のリペアセットで直してしまいましょう。

画像にあるようなクロスの破れであればクロスの破れは結構うまく隠せますフローリングの傷や凹みもリペアセットで隠せるなら隠しましょう。フローリングは減価償却がなく、1平米単位で請求があり、5万円くらいの請求が来るからです。パテで埋め、色を塗る方が安上がりです。

ただ、手先が器用な方はうまく隠せますが、工作が不得意ならやめた方がいいです。

フローリングのリペアセットPR

クロスのリペアセットPR

部分的にリフォーム会社に依頼する

DIYに自信がない方は、フローリングの傷隠しだけなど超部分的にでもリフォーム屋さんに修理を依頼するのも方法の一つです。

私は学生時代住んでいた部屋で、電池を落としてフローリング一か所が凹みました。結果、退去の時に5万円とられたことがあります。特にフローリングだけは、リフォーム会社に無料見積に来てもらって、部分的な処置で2~3万円で済むならやってもらったほうが得です。

襖や障子の張替えPR

退去以外の費用を削減する

コスト削減

ワンルームであっても、退去・引っ越し・新居入居では最低でも合計で20万円ほど費用が掛かります。退去でお金がかかる見込みが出てきたら、引っ越しと新居の費用を下げましょう。

  • 引っ越し費用削減
  • 次の賃貸物件の初期費用削減

引っ越し費用削減

安値で引っ越しをする際は、引っ越し比較サイトがおすすめです。

友人に手伝いを頼んだり個別に引っ越し会社に連絡するよりも、複数の業者から一度に見積もりを取得でき、大幅な時間節約になります。

また、引っ越し業者の金額を別の業者へ伝え「安値合戦」をさせることで、金額を下げることが可能です。

無料で利用できるサービスのため、引っ越しの手間と経費を削減できるため、おすすめです。

引っ越しの一括見積PR

次の賃貸物件の初期費用を削減

新居の初期費用や賃料を下げるには「賃料が安い」「敷金なし」「フリーレント募集(初月賃料無料)」の物件を選べばいいのは誰しもわかります。

後悔しない物件選びを忘れてはいけません。物件のうち以下の点に気を付ければ、後悔はしずらいです。

後悔しない部屋選び

  • 立地がいい
  • 部屋が広すぎない
  • 築年が古いのは諦める
  • 設備が少ないのは諦める

退去申請時~立ち合い時の対策

不動産管理会社に退去を申請し、こちらの退去立ち合い条件を伝え、こちらに有利になるようにしていきましょう。

  • 最終日までにクレーマー借主という印象を抱かせない
  • 退去申請書を不動産管理会社へ送り、退去条件を通知する
  • 引っ越し時に残置物を残さない・クロスも破かない
  • 引っ越し後に室内を全体的に写真撮影する
  • どうしても立ち会いが必要な場合の対策

最終日までにクレーマー借主という印象を抱かせない

退去手続きをするときはすべて、丁寧に温和な言葉遣いで処理しましょう。クレーマーかのような対応を取ると、不動産管理会社が、守りの姿勢をとり、クレーマー対策でエース社員を投入する可能性があります。

あわよくばできる値下げ交渉ができなくなる可能性もあり、エース社員が来ないようにして、交渉できるようにしましょう。

退去申請書を不動産管理会社へ送り、退去条件を通知する

不動産管理会社へ退去通知をするために、不動産管理会社の退去フォーマットを使って退去するときは注意が必要です。

不動産管理会社が提供する退去フォーマットで相手のペースに乗らない

不動産管理会社に退去を申請すると大抵、その会社の退去フォーマットが用意されています。その退去フォーマットには「~に同意する」という借主に不利な条項があるものです。

大抵、紙の申請書で作成しなければならず、署名し、郵送にて返信します。仮に拒否しなければならない文言や文章があれば、その点を二重線で消して印鑑を押してください。送る前にコピーの控えを持っておいてください。

拒否した方がいい内容(=二重線で消す&捺印)

  • 退去時に立ち合い必須に合意します
  • 立会時に合意した請求金額に合意します
  • 退去日までに当社が請求した費用を支払います
  • その他、不利な内容

仮に受付フォームがあれば、受付フォームを使わず、メールアドレスで申請します。退去日までに鍵をレターパックで送りますと伝えれば問題ありません。

こちらの条件を通知し、退去立ち合いは拒否する

退去立会は拒否して下さい。不動産管理会社が退去立ち合いをする目的は、不動産管理会社としては、立ち合いの時に安易に「はい」と言わせる方が処理上、楽なためです。

借主からは以下の内容を送りましょう。なんとしてでも原状回復ガイドラインをもとにしたメールでの交渉に持ち込みます。

  • 今後のご連絡はメールでお願いします。原状回復工事の請求書には、損耗の詳細を添付して下さい。専門家からそのような指導を受けています。
  • XX日までに退去する旨、退去日までに鍵はレターパックで送ります。
  • 部屋のリフォーム履歴を教えてください。XX日までに回答が無ければ、リフォームは新築時から行っていない事に御社は合意したとみなします。(※)

「リフォーム履歴がない」という管理会社は結構多いです。寝室①の壁の南面は2022年X月に工事した、寝室①の北側面は2021年X月に工事したというレベルです。なお、「いつも退去後は全面クロス張替え」「当社は全部屋クロス交換が原則です」という回答があれば、ガイドラインに反する超危険な会社です。

引っ越し時に残置物を残さない・クロスも破かない

残置物は残さないようにしましょう。会社によっては残置物一件5000円などそこそこかかります。

引っ越しで、家具を移動させる時、フローリングやクロスに傷をつけないようにしましょう。引っ越し業者が傷つけたら、必ず補修費を請求しましょう。

ご自身とご友人で引っ越しをするよりは、引っ越し業者に依頼した方が結果的にはコストパフォーマンスがいいです。引っ越しの比較サイトでさらに安く!

引っ越し後に室内を全体的に写真撮影する

室内写真をくまなく撮影しましょう。悪質な管理会社だと、不動産管理会社がわざと傷をつけ、見積金額を水増しするケースもあります。

どうしても立ち会いが必要な場合の対策

退去立ち合いをどうしても断ることができないことはあり得ます。とにかく原状回復ガイドラインに基づくメールでの交渉に持ち込むために、立ち合いでは「持ち帰り検討」で回避します。

行かざるを得ない立ち合いの際の対応

  • 退去立ち合い中は、一方的に録音をする
  • 専門家の指導のため、持ち帰り検討します」とだけ話す。何にも同意しない。
  • 書面に絶対にサインしない
  • 仮に借主が女性であれば知り合い男性の同行をし、甘く見てくる不動産管理会社に付け入るスキを与えない
  • 原状回復費用の請求書はメールでほしいと通知する

実際の値下げ交渉

値下げ交渉では、とにもかくにも原状回復ガイドラインに基づき借主負担だけを支払うことを伝えることです。すべて冷静に対処しましょう。できない部分ができてくれば、退去コンサルタントなどに頼るのもいいかもしれません。

  • 交渉はメールで
  • 請求書の確認
  • 請求書に書かれている補修費用がどの損耗に対応するかを確認する
  • 具体的事例での値下げシミュレーション
  • 明らかに不当な請求に不動産管理会社が屈しない時

交渉はメールで

交渉の基本姿勢は、メールで行います。対面や電話で話すと、何を話したのかを相手も忘れますし、ご自身(借主)も忘れてしまいます。

特に悪徳不動産管理会社の中には、対面や電話で威圧的な発言をすることでYESを言わせる会社もあります。メールだと履歴が残るので、メールで行ってください。

請求書の確認

不動産管理会社からもらった請求書を基に、借主(ご自身)が負担すべき項目と貸主が負担すべき項目を分けて明確に把握しておくことが必要です。

請求書に書かれている補修費用がどの損耗に対応するかを確認する

Youtube の動画にあった画像を拝借しています(詳細は後述)。上記の請求書内では、簡単に「~クロス張替え」としか書いてありません。クロスの平米単価が書かれていない請求書は要注意です。

本来的には、平米単価残存価値の計算が書かれているべきです。このようなざっくりとした請求書が出てきたときは、

  • 部屋のどの箇所の損耗に基づき、施工したのか?
  • 平米単価残存価値の計算を書くべきではないか?
  • 全体・全面補修ではなく一部補修が原状回復ガイドラインでは決まっているため、破損箇所は一部にならないか交渉

という質問をメールで投げかけましょう。

値下げを依頼するメールでのポイント

全般的に、不動産会社の請求書に対して怒ることなく冷静に、原状回復ガイドラインを引用しつつ、貸主負担であることを地道に証明していきましょう。

  • 冷静な対応
  • 電話ではなくメールで
  • 国交省原状回復ガイドラインに沿って
  • 証拠写真の提示
冷静な対応

感情的にならず、事実に基づいて冷静に交渉することが重要です。繰り返しになりますが、怒ると管理会社の中で対策を取られる可能性があります。

電話ではなくメールで

電話は切りましょう。必ずメールで受信送信し、エビデンスを残しましょう。

国交省原状回復ガイドラインに沿って

指摘をするときは国交省原状回復ガイドラインの参照箇所を明記し、貸主負担であることを説明する。

証拠写真の提示

メールでは入居時の状態を示す写真や記録を添付し、自分の主張を裏付ける材料として活用します。

脅しに屈しない

原状回復ガイドラインに基づいていれば悪徳管理会社の「少額裁判するぞ」に怯むことはありません。原状回復ガイドライン通りなら、裁判でも負けません。

具体的事例での値下げシミュレーション

事例がYoutube にあったので、ご紹介します。RYO MOCHIZUKIさんというYoutuber さんです。

前提として、筆者からこのYoutuber さんに悪意はありません。あくまでおかしい不動産管理会社がいるということを説明するための例です。

  • Youtuber:RYO MOCHIZUKIさん
  • 契約書・請求書分析
  • 動画を見てわかった状況
  • 特約事項
  • 請求書
  • 分析結果

Youtuber:RYO MOCHIZUKIさん

契約書・請求書分析

動画を見る限り、Youtuberさんが喫煙不可の部屋で喫煙したという問題はありますが、不動産管理会社が作った請求書に全般的に間違い・不審な点が多く、何も知らない新人が作成したかのようです。この内容なら、交渉で18万円ほど削減できます。

動画を見てわかった状況

  • 当初の合計請求金額:265,510円
  • 物件の間取り:1LDK
  • 入居期間:約半年
  • 喫煙するor しない:喫煙する
  • 破損状況:
    • 契約書本文は映像に出ていないので不明
    • 喫煙不可能の部屋で喫煙をした

特約事項の不審な点

Youtuber:Ryo Mochizuki さん https://youtu.be/DRYNEwKtpZ0?si=4zjQedFVR7UNzoze  の動画より抜粋

半年で退去なら短期解約違約金が発生するのはわからなくはありません。契約書の本文に書かれている可能性もわずかにありますが、物件ごとに短期解約違約金は変わるため、通常、契約書の特約欄で短期解約違約金について書かれます

Youtuberによると「管理会社の説明から敷金は全額償却だった」とのことですが、特約事項の一部の記載に「敷金の差し引き~借主に返却」とあり、一部償却・一部返却するタイプの敷金であり、全額償却ではないようです。怪しい雰囲気ですが・・・

請求書の不審な点

Youtuber:Ryo Mochizuki さん https://youtu.be/DRYNEwKtpZ0?si=4zjQedFVR7UNzoze  の動画より抜粋
賃料

8月1日~8月7日までの賃料が請求されているため、7月27日に入金した8月分賃料は丸々返金されるべきです。実際、原状回復費に充当されているのでよしとします

敷金

「敷金が全額償却」の扱いを間違っています。敷金が全額償却の意味は「原状回復費から敷金を差し引いて残金があっても0円になる」という意味です。

このケースでは、「敷金が全額償却」として0円になっていますが、全額原状回復費に充てられるべきです。ぼったくりもいいところですよ。

前述の原状回復ガイドライン「事例23」を引用しつつ、「全額の敷金償却は消費者契約法10条の要件を充たしており、無効である」と交渉してもいいです。

エアコンクリーニング

エアコンクリーニング費用については、特約事項に記載がありませんでした。そのため、払う必要はありません

リフォーム履歴

前回のリフォーム日付がないため、残存価値の計算ができません。必ずしも前の入居者退去時点でリフォームをしているとは限らないからです。このようなケースでは、リフォーム履歴を不動産管理会社へ必ず確認する必要があります。

クロス

クロス張替えについて残存価値の計算式クロスの平米単価が記載がないため、クロスの単価が盛られている可能性があります。

仮に1LDKが10畳+6畳の部屋だとして、多く見積もっても壁天井の合計が60~70㎡のクロス(1100円/平米)⇒77,000円~80,000円前後(半年分の経年劣化で6000円)+工賃25,000円⇒1LDKのクロス張替えは合計94,000円くらいでしょうかね・・・

また、アクセントクロスが23,000円は高すぎる気も・・・

分析結果

全部合わせると、追加で支払う金額は約8.6万円で済みます。交渉をすれば、約18万円を削減できる可能性がありました(「差異」欄)。仮に契約書本文を読んで、短期解約違約金が支払い不要と判明したならば持ち出しは49円でした。

喫煙禁止の部屋において喫煙をしたから、不動産管理会社から怒りを買ったのだろうとは想定します。ただ、敷金を無条件で0円にするというのは明らかな「ぼったくり」にしか見えません。不動産管理会社として、「匂い対策」など費用が掛かるなら作業項目の整理の仕方があったのではないかとは感じます。

ご自身で交渉が難しい時

ご自身で交渉が難しい時は外部の方に対応をお願いしましょう。できれば、以下の5つの資料(※)を用意し、外部の相談先に相談してください。

外部の人に依頼するときに用意する5つの資料

  1. 請求書(内訳書)
  2. 入居時と退去時の部屋の状態を示す写真や記録
  3. 賃貸契約書
  4. 部屋の損耗箇所を一覧にし、各箇所を原状回復ガイドラインをもとに貸主・借主負担を記載した資料
  5. 不動産管理会社との交渉経緯が書かれた資料

頼りになる3つの外部相談先

  • 消費者センターに相談する
  • ココナラ不動産コンサルタントを検索する
  • ココナラで専門の弁護士を探し60万円以下の少額裁判とする

消費者センターに相談する

①~⑤の資料を用意して、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話し、最寄りの消費生活センターを紹介してもらいます。その後は、消費生活センターの指示に従ってください。

ココナラで不動産コンサルタントを検索する

①~⑤の資料を用意して、ココナラで不動産コンサルタントを探して、好きな不動産コンサルタントを選んでください。

なお、コンサルタントを使う場合、「10万円以上のコストダウンになるなら、数万円のコンサルタント費用は払う」などのご自身での決めが必要です。きっと力になってくれると思います。

口コミを読む限りは「フォール」さんがよさそうです。「フォール 退去」で検索してみてください。

ココナラで専門の弁護士を探し60万円以下の少額裁判とする

少額裁判 専門弁護士

①~⑤の資料を用意して、少額裁判を専門とする弁護士をココナラで探してください。きっと力になってくれると思います。

まとめ

退去時には、原状回復ガイドラインをもとに、借主として自分がどれだけの費用を負担するかを理解し、不動産管理会社へ交渉することが重要です。ご自身でできなければ、専門家に相談することが望ましいです。